『フィギュアスケートに懸ける人々』宇都宮直子〈小学館101新書〉
『フィギュアスケートに懸ける人々-なぜ、いつから、日本は強くなったのか (小学館101新書)』
宇都宮直子
小学館〈小学館101新書〉 (2010/1/14)
第二次大戦後から現在(2009年末)までの日本のフィギュアスケートの歴史を、現場の指導者や選手、支援する学校や企業の当事者にインタビューしたスポーツドキュメンタリー。
《おもな証言者》
伊藤みどり(元選手/元プロスケーター)・山田満智子(元選手/指導者)・小塚嗣彦(元選手/指導者)・小塚幸子(元選手/指導者)・小塚崇彦(選手)・佐藤信夫(元選手/指導者)・吉岡伸彦(日本スケート連盟理事)・西田美和(プロスケーター)ほか
日本にフィギュアスケートが紹介されたのは大正時代ですが、本格的に選手の育成が始まったのは第二次世界大戦後でした。最初は指導法も手探りで練習環境も悪く、成果を見せる舞台もありませんでした。ようやく世界の試合に出ても、採点は欧米に有利で悔しい思いをしてきました。現在でも、同じレベルの演技なら、試合によく出ている馴染みのある選手の方が有利に採点されるそうです。
苦労をした第一世代の選手が指導者になり、スケートの楽しさを子どもたちに教え、才能のある選手をサポートする環境を整えていきました。
昔の話をすると、今の有名な選手の親が、指導者や選手として道を切り開いていたことがわかります。狭い世界なので他の選手の親に指導してもらった話もごろごろしています。
日本だけでなく世界の女子フィギュアスケートの価値観を変えた天才スケーター・伊藤みどりさん。伊藤さんを育てた山田満智子コーチがスケートを始めたきっかけが、小塚崇彦選手のお祖父さんの小塚光彦さんに勧められたというめぐり合わせがあったからこそ、今のフィギュア王国・愛知ができました。
第二次大戦後、世界は西側(資本主義国)と東側(社会主義国)が対立する「冷たい戦争」という状態にありました。東側は国の力を誇示するために、優秀なスポーツ選手や芸術家を国の力で育成し、オリンピックなどですばらしい成績を上げていました。西側の個人の力では限界に達し、世界レベルの選手の育成に企業や組織の後援が不可欠になりました。
日本スケート連盟も、長野オリンピックを目標とした強化戦略でノービス(9歳から13歳以下の選手)を集めた強化合宿を行い、有望な選手を支援すると共に選手たちに目標を提示しました。
また、プリンスアイスワールドという日本のアイススケートショーがプロスケーターという道を切り開きました。伊藤みどりさんや荒川静香さんといったオリンピックメダリストが、日本より評価の高い欧米からの誘いを断って、日本で滑り続けフィギュアスケートのすばらしさを広めました。
フィギュア大国になった現在の日本の選手たちは、先輩たちの演技にあこがれ、支援してくれる人たちの苦労を受け継ぎ、自分の好きなフィギュアスケートを滑れる喜びを知っているから、謙虚で前向きなのがすごく好感が持てます。
指導者の心遣いと教え子の敬意。最近の日本の学校では忘れられた美しい師弟関係が心強い。
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