『アリスの服が着たい―ヴィクトリア朝児童文学と子供服の誕生』坂井妙子〈勁草書房〉
『アリスの服が着たい―ヴィクトリア朝児童文学と子供服の誕生』
坂井妙子〈勁草書房〉(2007/7/27)
四六判ハードカバー248ページ
ヴィクトリア朝の19世紀後半から20世紀初頭のエドワード朝のイギリスの子供服と、流行の児童文学の関係を論じた比較文化研究書。
成人服の縮小版とは異なる子供専用の服、とくに児童文学や絵本のキャラクターの服装を商品化した「キャラクター子供服」についてとりあげる。
理想的な子供時代を作り上げるための装置としての子供服が、この時代に中産階級に人気が出て、デパートがそれを広告で後押しする。
子どもにかわいい服を着せて喜ぶ親とか、大人が着ると恥ずかしいようなちょっとレトロ(古風)な衣装が子供用パーティードレスになるとか、今の日本に通じる文化があります。
著者が2004年4月から1年間、イギリスで行った調査に基づく。
児童文学や絵本や雑誌のイラスト、肖像画や肖像写真、当時の雑誌に掲載された子供服の広告、ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館などに保管された当時の子供服の写真など図版多数。
◇第一章「不思議の国のアリス」
パフスリーブのワンピースにエプロンとしましまストッキング。
アリス以外のキャラクターは、テニエルのイラストを踏襲するが、アリスについては当時の中産階級(ミドルクラス)の少女の日常着に描きかえられる。
大人が振り返る理想の「黄金の午後」の服装となる。
◇第二章「ケイト・グリーナウェイ」
古風(レトロ)でシンプルな田園風衣装。
ゆったりしたハイウエストのワンピース、モブキャップ、エプロン、スモックなど農民の野良着を理想化。
古き良き黄金時代のイングランドを連想させる。
一般の人からは変わり者に見られていた。
21世紀日本でいうと「森ガール」みたいなもんです。自然志向でゆったりしていて、エコ思想が入っているみたいな。
◇第三章「ハバートおばさん」
マザーグースの中の、犬のために買い物をするおばあさん。
古い絵本では下層階級の年配の女性として描かれた。
19世紀後半からとんがり帽子にマント姿の魔女みたいな姿に進化する。
◇第四章「フォントロイ・スーツ(小公子)」
バーネット『小公子(リトル・ロード・フォントロイ)』の主人公セドリックの服。
レースの襟がついたヴェルヴェットのチュニック(長い上着)とニッカーボッカーズ(半ズボン)のスーツに、ひざ下はストッキング、腰には幅広のサッシュ。17世紀の上流階級の男性服を模倣した男児服。
親の愛情に包まれた幸せな男の子というイメージが母親たちのプライドを満足させる。
高貴なイメージながら、着回しができ耐久性があり、安い布なら経済的だったのも人気の理由。
◇第五章「セーラー服」
イギリス海軍の水兵の制服を子供向けにアレンジ。
イギリス王室の王子たちが着用する。
子どもには、大英帝国を守る海軍に対する憧れ。
大人には心身ともに健全な良い子の好印象。
そして活動的な子どもの動きに耐える実用性で、理想の子供服の代表となる。
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