バーネット『消えた王子』~貴種流離譚少年小説
『消えた王子(上) (岩波少年文庫)』
『消えた王子(下) (岩波少年文庫)』
フランシス・ホジソン・バーネット
訳:中村妙子
挿画:レナード・ワイスガード
カバー画:平澤朋子
岩波少年文庫162・163
2010年2月初版
Frances Hodgson Burnet "THE LOST PRINCE" (1915) の邦訳。バーネット最後の児童文学。
バーネットは『小公女』『小公子』『秘密の花園』などで知られる児童文学作家、小説家。イギリスのマンチェスター出身。幼くして父親を亡くし、残された母親と五人兄弟は母方の伯父を頼ってアメリカにわたります。貧しい生活の中で生活費のために小説を書いて出版社に送り、流行作家になりました。
バーネットの代表作は少女向けのイメージですが、『消えた王子』は少年向け冒険小説。
ヨーロッパ各地に鉄道が通り、ロンドンの街では乗合馬車が街を走っている時代。
話の中心となるのはヨーロッパの山岳地帯にある架空の国サマヴィアとイギリス・ロンドンの裏町。
サマヴィアでは500年前に有力な王位継承者だったイヴォール・フェドロヴィッチ王子が行方不明になってから内乱が続いている。
主人公のマルコ・ロリスタンは幼いころから父とともにヨーロッパ各地を放浪している。
父親が関係しているサマヴィアの消えた王子の子孫を支持する秘密組織に伝言を届ける役目が、マルコに任される。イギリスで意気投合した友人のラットとともに、ヨーロッパ各地で隠密裏に「ランプがともった」と伝言しながらサマヴィアを目指す。
「貴種流離譚(きしゅりゅうりたん)」とは、身分の高い人が故郷を離れて流浪し、周囲の助けを受けながら困難を克服している説話類型。
貧しい暮らしの中でも誇りを持って生きる父子。不自由な体だが抜群の知力と妄信的な崇拝で全力で助けてくれる友人。祖国の一般市民から周囲の国の重要人物までかかわる秘密組織。敵の美人スパイ。偉大な人物を理解しない強欲な下宿の大家。
田中芳樹とかライトノベルにありそうな設定てんこ盛り。べたべたに俗っぽい展開ですがわくわくさせてくれます。現代のラノベなら味方に女子を入れているでしょうね。
主人公の少年たちに崇拝されるカリスマ性のある父親。それは幼くして自分の父親を亡くし、二度の離婚で自分の息子に与えられなかった頼りになる理想の父親像だったようです。
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