メールマガジン『和服の基礎知識』第44号 2004/07/15発行で書いた〈米屋かぶり〉について補足説明します。
手許の資料では〈米屋かぶり〉について文章で説明したものがなくて、絵で見て判断したので勘違いしました。
ようやく見つけた説明文が、goo辞書およびinfoseek辞書の国語辞典『大辞林 第二版』ではこう書かれています。
こめやかぶり 【米屋冠り】
米屋・搗(つ)き屋などの手ぬぐいのかぶり方。頭の前方をすっぽり包み、両端を後ろに回して留める。
しかし、資料の挿絵では〈米屋かぶり〉は手ぬぐいの端が前にきているように見えて、国語辞典の説明文と食い違います。
いろいろ調べてみると、ほとんどの本では〈米屋かぶり〉の説明に「守貞謾稿」の挿絵を使っています。
「守貞謾稿(もりさだまんこう)」は江戸末期の風俗考証家、喜多川守貞(きたがわ・もりさだ)の著作です。江戸と上方を比較し、図版が多く、近世風俗考証の集大成・決定版として現代もなお引用が絶えないそうです。
「守貞謾稿」は現在、『近世風俗志(守貞謾稿)』(喜多川守貞:著/宇佐美英機:校訂)の題名で岩波文庫に収録されています(全5巻)。
『近世風俗志(二)』P419に〈米屋かぶり〉の説明がありました。


手拭のあるひは左あるひは右の端より頭に巻き、上の方を寄せて巻き終りの端前隅を挟むなり。京坂は初め眼を覆うばかりに巻き、被り終りに隅を額に出し、眼を覆ひたるを上に引き返し挟むなり。すなわち上図のごとし。
江戸は初めより目上に巻き被り、終りに前隅を下図のごとく額に挟む。
米屋と云ふことは、図のごとく被りて埃を除くをもっぱらとし、米屋は特に埃多き賈なる故に、専らこれをなす故に名とす。その他にも業に応じてこれをなすなし。
つまり、手ぬぐいの端を頭の前からぐるっと巻いて、終りを前に挟み込む。上方(京都・大阪)では前を眼に被るぐらい深く巻いて、巻き終わったら外に折り返す。江戸では巻き終わりを内側に挟み込む。ということですか。
というわけで『和服の基礎知識』の〈米屋かぶり〉の項目を訂正します。
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◇米屋かぶり(こめやかぶり)
手ぬぐいの右または左端を額から頭に巻き、巻き終わりを前に挟み込む。上方(京都・大阪)では前を眼に被るぐらい深く巻いて、巻き終わったら外に折り返す。江戸では巻き終わりを内側に挟み込む。
米屋・搗き屋(つきや)などが、精米作業中に頭に糠(ぬか)がかかるのを防ぐためにする手ぬぐいのかぶり方。
米屋冠(こめやかむり)。